「喜びに溢れた人」 マタイによる福音書2章1〜12節
 クリスマス

 クリスマスの劇でよく演じられるところです。博士は立派な服装をし、らくだに乗った高貴な人々として登場してきます。主役は博士達、脇役、悪役はへロデオ王ということになるでしょうか。口語訳は博士、英語聖書ではWiseman賢者、賢い人と訳されている。
 新共同訳では「占星術の学者たち」と訳されている。
 原語はマギ(マゴス)という言葉です。星占いの学者、よい意味では天文学者、悪くは怪しげな星占い師です。そもそも、聖書には「東の方から来た占星術の学者たち」とだけ記されています。この人達はここにただ一度だけ出てくる人々で、キリスト誕生には場違いな不思議な人たちです。ユダヤの国からは遙かに遠く離れた国の異邦人でした。しかし、彼らがいち早く神の御子の誕生を拝し、大きな喜びに溢れた数少ない人となったのです。不思議なことです。

1イエスは、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれた。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルレムに来て、
2言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは、東方でその方の星を見たので、拝みに来たものです。」
3これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であだった。
 ヘロデ王の時代(在位:BC37〜BC4)、彼の晩年に御子は誕生した。暗黒時代でした。ヘロデ王はユダヤ人で南エドム(イドマヤ)人、彼の家系は権力志向の強い家柄で巧みに支配者に取り入り、ついにユダヤの王という地位をローマ帝国から得たのである。彼は祭司長も律法学者も支配し、自分のいいなりにしていた。彼らはヘロデ王の飼い犬に成り下がっていた。ヘロデ王は70才近い老年になって、王位をねらう近親者に悩まされ、また民衆の恨みの声に取り囲まれ、病に苦しみ悲惨な日々を送った、と言われている。最後まで権力の座にしがみつきBC4年に死んだ。
 占星術の学者が来たのはそのようなヘロデが晩年の時でした。
 ユダヤの王が生まれた、と聞いてヘロデが不安を抱いたのもわかります。疑心暗鬼、猜疑心の固まり、不安と怒りで満ちていた
 エルサレムの人々も皆同じであった。エルサレムの人々というのは神殿や議会(70人会議、サンヘドリン)で働く人々ということです。宗教的指導者たちのことです。彼らが不安になったのはヘロデ王に結びつき、同じ新しい王が生まれたら、自分たちの立場が危うくなるからです。彼らはメシアより、富と地位です。

 そんな彼らの所に思いがけない人々が来て、思いがけないことを尋ねるのです。東の方の占星術の学者達です。ユダヤ人の王が生まれたのだが、どこにおられるのかということです。彼らは何故それを知ったのか。
 聖書は運勢とか星占い、八卦とかについて否定的であり、不信仰の証拠と見ています。つまり明日のことは分からないまま、神にゆだねて安心して生きるのが信仰の生き方なのです。
 それは彼らの知識、力でそれを発見したのではなく、神のよったのです。というのも、実は彼らこそ神に反することを行い、最も神から遠い人々であったからでした。真の賢者ではなく、愚者であった。罪人であった。キリストはそのkれらをも救うために、暗黒の世、罪の世に来て下さった。まず神から一番遠くに離れた人々を神は選び、真の王、キリストの誕生を知らせ、彼らの心の闇を光で照らし、真理を啓示された。それによって彼らは真理を知り、是非ともその王に会いたいとの熱い聖なる願いを抱いた。
 これは神による一方的な働きかけ、恵みの御業でした。
 
4、王の民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれるのことになっているのかと問いただした。
5彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者にこう書かれています。
6『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」
7そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期確かめた。
8そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう。と言ってベツレヘムへ送り出した。」

 祭司長や律法学者は正確にベツレヘムであることを突き止めている。彼らの聖書知識は正しいものでした。それなのに何故、その知識とは逆の姿になるのだろうか。不思議なことです。富と神に兼ね仕えることは出来ない。権力はどこまでも人を残虐にしていく。(北朝鮮、側近を死刑に)

9彼らは王の言ったことを聞いて出かけた。すると、見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。10その星を見て、彼らはたいそう喜んだ。
11そしてその家に入って、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。
12
それから、夢でヘロデのところへ戻るなというおつげを受けたので、別の道を通って自分たちの国へと帰って行った。

 占星術の学者達は先だっていく星が、幼子のいる場所で止まって居るのを見て喜びに溢れた。非常に大きな喜びを喜んだ。小躍りせんばかりに喜んだ。歓喜雀躍した。そして王宮とはかけ離れた貧しい家に入り、そこにいた幼子にひれ伏して礼拝し、乗ってきた宝物を献げた。彼らは夢で神のお告げを受け、ヘロデ所には行かないで別の道を通って帰った。悪の知恵は神の前に必ず打ち破られ、滅びる。
 神の国からは最も遠く離れた占星術の学者に始まって、ヘロデ王も、エルサレムの指導者達も、そして全ての人がキリストに出会い、喜びに溢れるように主は十字架で血を流し、罪の赦し成し遂げて下さいました。一枚の案内が、声かけが、キリストへと導いていただけるものとなるかもしれません。クリスマスの時、キリストとの出会いへと導かれる人が起こされますようにと祈りましょう。