『隔ての壁』 使徒言行録21章27〜22章2節

エルサレムで騒動が起こるまで
 誓願(献身)を立てた4人のユダヤ人クリスチャン青年の清めの儀式にも同行した。これまで、かねてから言われていたエルサレムで手足を縛られ投獄されることも、苦難を受けることもなかった。ところが、その清めの期間の7日目が無事終わろうとしていた時、大騒動が巻き起こったのです。パウロを知っていたアジア州(エフェソ)のユダヤ人達が五旬世知の祭の為にエルサレムに来ていた。彼らがパウロを見つけ、あらぬ事を言いふらして、群衆を巻き込んで、パウロを殺害しようと殴りつけてきたのですまさにパウロの命は風前の灯火でした。そこに神の助け、千人隊長がアントニオの塔から駆けつけてきたのです。

命の危険の時、心構えが出来ているか。
 人生は突然中断される時がある。いざそれが自分の身に降りかかると、ちょっと待って下さい!まだ心の準備が出来ていません、と言うだろうか?
 パウロは命の危険は承知の上でエルされるに来ていたので、何が起ころうと準備が出来ていた。大騒動が起こった時、命の危険な時も、狼狽えることなく、神様のなされることに思いを巡らせていたのではないだろうか。

大騒動が起こった真相は何だったのか。原因は「隔ての壁」だった。
 異邦人の庭(外庭)と内庭との間は【隔ての壁】で分けられ、神殿の入り口には、立ち入り禁止の立て札がかけられていた。
 その立て札には「いかなる外国人も神殿の周囲にめぐらされた格子づくりの仕切りの壁のなかに足を踏み入れてはならない。これを犯す者は死を持って罰せられる。」(ヨセフオスユダヤ戦記、ユダヤ古代史より)

パウロに対するねたみと敵意という「隔ての壁」
 彼らはエフェソにおいて、パウロがイエスこそ神が遣わされたメシアであり、この方を信じる者はだれでもその信仰によって義とされる。それはユダヤ人もギリシャ人も関係無く、このイエスを信じる者はだれでも、神の家族とされる、神の民とされることを聞いて、猛反対した人々であった。
 それだけでなく、パウロが異邦人に福音を語り、めざましい成果を上げているのを見てねたみを起こし、それが敵意へと繋がっていった。

 イエス様の場合と同じ。多くの群衆がイエス様の元に集まり、その語られる御言葉に吸い寄せられている様子を見て、当時のファリサイ派や指導者達はねたみを起こし、敵意を持ち、十字架につけようと画策したのです。イエス様は十字架上で、彼らの罪の赦しを祈られた。パウロはどうだったでしょうか。パウロも皆からリンチを受けている中で、彼らの罪の赦しを祈ったでしょう。

 私達は敵意というものを、日常生活のなかでよく持ってしまいます。敵意と言っても、相手を憎いと思う強い気持ちだけでなく、相手を苦手と感じること、うらやましさの中にあるねたみ、最初は小さなねたみが敵意というものに膨らんでいくこともあります。一度、敵意をもってしまうと、それが壁となり、人と人を「隔てる壁」になってしまう。これは私達がよく経験することではないでしょうか。人と人の間に壁を作ってしまうと、その壁を乗り越えるのはとても大変なことです。

 どのようにしたら壁を乗り越えることができるのでしょうか。
 パウロはエフェソの信徒への手紙2:14「ご自分の肉において敵意という隔ての壁を取り壊し、規則と戒律づくめの律法を廃墟されました。こうしてキリストは、双方をご自分において一人の新しい人に造り上げて平和を実現し、十字架を通して、両者を一つの体として神と和解させ、十字架によって敵意を滅ぼされました。」
 壁を乗り越えるのではなく、壁を取り壊す。しかも私達が壊すのではなく。イエス様が壊してくださると言っています。
 パウロは、こんな私が許されるのなら、私を迫害するこの人達も許されないはずがない。イエス様はこの人達の為にも十字架について下さった。イエス様が自分にして下さった十字架の赦しを思えば思うほど、敵意は無くなっていったのです。

 敵意は自分の力ではどうしようのない。押さえても、押さえても、ますます大きく増幅していく。
 その時、「主エイス様、わたしの中の敵意を沈めて下さい、取り除いて下さい」と祈る手段をもっていることは何と幸いなことでしょうか。
 私達には何時でも何処でも「祈り」という強力な武器がある。敵意や憎しみにと捕らわれるとき、「主よ、この私を哀れんで下さい、この憎しみから、敵意から解き放って下さい」と。
 十字架によって敵意という隔ての壁を取り壊して下さる方に寄って、一つにされていきましょう。


21:27七日の期間が終わろうとしていたとき、アジア州から来たユダヤ人たちが神殿の境内でパウロを見つけ、全群衆を扇動して彼を捕らえ、
21:28こう叫んだ。「イスラエルの人たち、手伝ってくれ。この男は、民と律法とこの場所を無視することを、至るところでだれにでも教えている。その上、ギリシア人を境内に連れ込んで、この聖なる場所を汚してしまった。」
21:29彼らは、エフェソ出身のトロフィモが前に都でパウロと一緒にいたのを見かけたので、パウロが彼を境内に連れ込んだのだと思ったからである。
21:30それで、都全体は大騒ぎになり、民衆は駆け寄って来て、パウロを捕らえ、境内から引きずり出した。そして、門はどれもすぐに閉ざされた。
21:31彼らがパウロを殺そうとしていたとき、エルサレム中が混乱状態に陥っているという報告が、守備大隊の千人隊長のもとに届いた。
21:32千人隊長は直ちに兵士と百人隊長を率いて、その場に駆けつけた。群衆は千人隊長と兵士を見ると、パウロを殴るのをやめた。
21:33千人隊長は近寄ってパウロを捕らえ、二本の鎖で縛るように命じた。そして、パウロが何者であるのか、また、何をしたのかと尋ねた。
21:34しかし、群衆はあれやこれやと叫び立てていた。千人隊長は、騒々しくて真相をつかむことができないので、パウロを兵営に連れて行くように命じた。
21:35パウロが階段にさしかかったとき、群衆の暴行を避けるために、兵士たちは彼を担いで行かなければならなかった。
21:36大勢の民衆が、「その男を殺してしまえ」と叫びながらついて来たからである。
21:37パウロは兵営の中に連れて行かれそうになったとき、「ひと言お話ししてもよいでしょうか」と千人隊長に言った。すると、千人隊長が尋ねた。「ギリシア語が話せるのか。
21:38それならお前は、最近反乱を起こし、四千人の暗殺者を引き連れて荒れ野へ行った、あのエジプト人ではないのか。」
21:39パウロは言った。「わたしは確かにユダヤ人です。キリキア州のれっきとした町、タルソスの市民です。どうか、この人たちに話をさせてください。」
21:40千人隊長が許可したので、パウロは階段の上に立ち、民衆を手で制した。すっかり静かになったとき、パウロはヘブライ語で話し始めた。
22:01「兄弟であり父である皆さん、これから申し上げる弁明を聞いてください。」
22:02パウロがヘブライ語で話すのを聞いて、人々はますます静かになった。パウロは言った。